東京高等裁判所 昭和56年(ラ)130号 決定
本件記録によると、相手方(執行債権者)は、債務者南伸海運株式会社に対する東京地方裁判所昭和五〇年(ワ)第七五三三号賃料請求事件判決の執行力ある正本に基づき、右債務者の第三債務者株式会社東海銀行に対する預金債権の差押・転付命令を東京地方裁判所に申請し、同裁判所は、右申請に基づき昭和五一年四月一五日右預金債権に対する差押・転付命令を発し、右命令は同月一六日第三債務者株式会社東海銀行に送達された。そして、債務者南伸海運株式会社に対しては、同裁判所は、右命令を昭和五一年四月一五日本店所在地たる東京都中央区八重洲一丁目八番一六号に宛てて特別送達郵便の方法で発送したが、右債務者はそこにおらないため送達できず、右郵便は転居先の横浜市中区弁天通四の六四万善ビルに転送の手続がとられたが、そこにも所在せず、送達不能となり、更に昭和五一年四月二六日右債務者の代表者代表取締役の住所たる横浜市保土ケ谷区常盤台一番地の五一平井紀征方に宛てて特別送達郵便の方法で発送したが、転居先不明で送達できなかったものであることを認めることができる。
そうすれば、右送達当時右債務者の所在が明らかでなかったのであるから、このような場合には民訴法五四二条により、右差押・転付命令の右債務者に対する送達は、これを必要としなかったものというべきである。従って、右差押・転付命令は、第三債務者たる株式会社東海銀行に対する前記送達の時(昭和五一年四月一六日)をもって完全に効力を生じ、それによって執行は終了したものといわなければならない(本件は民事執行法の適用される以前の事件である。)。以上に説示したところから、右債務者がその後である昭和五一年五月七日に破産宣告を受けたとしても、そのことをもって右差押・転付命令に対する抗告理由となしえず、本件抗告理由の理由のないことは明らかである。
(鈴木 井田 高山)